Dog ears

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無題

 人間、何かを壊す事は実に簡単だ。欲望のままに、衝動のままに、駆り立てられる様にして、大切なものを壊して、さあ復讐だ、これが正義だと、勢い任せに生きたものはいいけれど、はたと振り返ってその有り様を見ると、ただ虚しい。喜びも悲しみも特に無い。その様になってしまったのだという感慨だけが残る。努力は辛い、努力を押し付けるなと人は言うけれど、本当は誰もが知っている。本当に欲しいものは、苦しみの上に成り立っている。犠牲の上に成り立っている。幸せな生活。それは決して欲望とは相容れない。どこかで妥協しなければならない。これ以上は駄目だ、そう理性が言った時、足を止められるかそうでないかで、人の人生は大きく変わる。その選択は日常の中に溶け込み、何千何万回と繰り返し、最初はほんの些細だった変化が、気付けば大海を隔てた岸と岸になって、もう二度と手に入らないものだと分かる。どちらが幸せかなど分からない。あるいは本当の幸せなど存在しないのかもしれない。価値観とは人間が定めたもので、この世界とは何の関係もないのだから、私達を保証してくれる存在などどこにもありはしない。だから人は人を求める。人生は孤独だなどと言いつつも心のどこかでは期待している。新しい風を、自分には見えない何かを見せてくれる別の人間を。人間に必要なものは幸せでも欲望でもない。希望だ。