Dog ears

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無題

 穏やかな生活を送っているとたまに、病気やトラウマからはもう解放されていて、完全に自由な状態なのではないか、あるいは、今では全て克服出来ているのではないかと思える事がある。そういう時には嬉しいのと同時に、何となく怖い様な、苦しい様な気配を感じる。理由は何となく分かる。完全に自由とか、全て克服するとか、それらは人間に出来る芸当じゃない。これまでもそうだった様に病気には波があるものだし、トラウマは定期的にぶり返す。血とリンパ液にまみれながら早く人間になりたいと歯噛みする日はまた来るかもしれないし、過去の記憶が一気に押し寄せて顔も世界も歪んで何時間も涙が出続けながら自分でも訳の分からない事を呟き続ける事もあるかもしれないし、突然人の話す声が気になり出して不安が増長されパニックに陥る事もあると思う。というか、今も断続的にそれらはある。そんな話をしていると、驚くほど多くの人が「早く良くなるといいね」と励ましてくれるけれど、その度に自虐的な笑いがこみ上げてくる事を否定出来ない。「良くなる」とは何なのだろう。苦痛が消え去り、薬を飲まなくても十分に健康的な生活を送れる様になればそれが「良くなる」という事なのだろうけれど、自分にとっての希望はそんなものじゃないし、「苦痛が消え去る」なんて事があり得ない事は誰にだって分かる。仮に抱えている病気の全てが完治したとしても、自分はかつて病んでいたという事実に対して苦痛や不安を抱えてそれに抗いながら生きていくしかない。希望と言うなら、抗う事こそがそれだと思う。好きに抗いながら生きていけるなら、それを糧にして病と付き合っていける気がする。